移転価格税制のローカルファイル作成を行うメリット

移転価格税制で重要となるローカルファイルとは?

移転価格税制は国外関連取引を行う全ての法人が適用対象となりますが、このうち前事業年度に行った国外関連取引の合計額が50億円以上、もしくは無形資産取引の合計額が3億円以上の企業にはローカルファイルの作成が義務付けられています。
ローカルファイルとは、独立企業間価格の算定に必要と認められる諸書類で、14種類ほどの書類から構成されますが、大きく海外子会社との取引内容が記載された書類と、海外子会社との取引における独立企業間価格を算定するための書類に分けられます。
また、ローカルファイルの作成が義務付けられた企業は、確定申告書の提出期限までに作成もしくは取得して、保存しておかなければなりません。

なお、この義務のことを同時文書化義務と言います。
この同時文書化義務の対象とならなかった企業であっても、税務調査時にローカルファイルに相当する書類の提示や提出が求められることがあります。
指定日までに提示・提出できなかった場合、推定課税及び同業者調査の対象となるため、同時文書化義務の対象でない企業であっても移転価格税制対策としてローカルファイルを作成しておくことをおすすめします。

ローカルファイル作成で得られる副次的メリット

ローカルファイルは移転価格調査の際に、採用している対価設定の正当性を主張するための根拠となります。
そのため、同時文書化義務の対象でない企業であっても、ローカルファイルを作成しておくことで移転価格税制のリスクを軽減することが可能です。

また、ローカルファイルの作成は単に移転価格税制対策になるだけではありません。
ローカルファイルを作成する場合、親会社は国外関連者の協力を得た上で取引分析や機能・リスク分析、市場・産業分析などの分析を行うことになります。
これらの分析を行うことで親会社は、グループの状況を包括的に把握することができます。

経営の可視化が実現できるため、経営の無駄を排除したり経営の効率化を図ったりすることが可能となります。
加えて、これまで認識できていなかった経営リスクが明確になるとともに、ローカルファイルの作成を通じて経営管理上の協力の取り付けが容易となるため子会社管理・子会社統治が改善するといったメリットを得ることも可能です。

まとめ

移転価格税制課税が行われると、同一の所得に対して複数の国で課税される(国際的二重課税)リスクが生じます。
しかし、ローカルファイルを作成しておけば国税当局に対価設定の正当性を主張できるため、移転価格税制課税のリスクを軽減することが可能です。
また、ローカルファイルを作成することで、経営の可視化による様々な副次的なメリットを得ることができるため、同時文書化義務の対象外であってもローカルファイルを作成しておくことをおすすめします。