必ず押さえておきたい!移転価格税制のローカルファイル作成に関する豆知識

平成28年度の税制改正で、移転価格税制に係る文書化制度が整備されました。
これに伴い、海外のグループ会社と取引を持つ企業はグループ内取引価格を算定するための書類でもある独立企業間価格を算定するために必要とされる書類、ローカルファイルを法人税の申告期限までに作成する、もしくは取得して保存を行う同時文書化の義務付けが行われました。
こちらのコンテンツでは、移転価格税制に厳格な地域や必ず押さえておかなければならない移転価格税制のローカルファイルの作成に関する豆知識を解説しています。
そのため、こちらのコンテンツを利用してローカルファイルの作成に係る事務負担を軽減できるようにしましょう。

移転価格税制とは何か分かりやすく解説

ローカルファイル作成の知識を解説する前に、移転価格税制とは何を意味する制度であるのか理解しておく必要があります。
企業が海外にある関連会社との取引価格(移転価格:TP)を通常の値段と異なる金額に設定すると、一方の利益を他方に移転することができます。
移転価格税制は、このような海外の関連会社との取引を通じた所得の海外移転を防止する目的で、海外の関連会社との契約が通常の取引価格(独立企業間価格:ALP)で行われたとみなし所得計算を行って課税を行う制度です。

移転価格税制の適用関係は、国外関連取引の判定として外国法人との間に資産の売買や役務の提供、第三者間であれば対価の授受が伴う全ての取引の有無を調査する、調査により取引がないときには移転価格税制は適用外となります。
ここで有りとなったときには、次のステップとして国外関連者の調査を行います。
外国法人との間に親子関係や兄弟関係、実質支配関係や連鎖関係などいずれかの特殊な関係の有無を調査、一つでも該当する場合は移転価格税制が適用され、所得の海外移転の有無の判定へと続き、所得の海外移転が有りとなった場合に限り国外関連取引が独立企業間価格で行われたとみなされ移転価格税制が適用されます。

日本の移転価格文書化制度の整備について

平成28年に税制改正が行われたことで、租税特別措置法の一部が改正されてBEPSプロジェクトの最終報告書に基づきローカルファイル・国別報告事項・事業概況報告事項の3つの移転価格税制に係る文書化制度が整備されました。
ローカルファイルは、国外関連取引でのAPPを算定するための詳細情報を記したもので、同時文書化義務を持ちます。
一定規模を超える国外関連取引を行う会社に対し、ローカルファイルを確定申告の期限間に作成する義務付けが行われ、調査の際には調査担当者の要望に応じて一定期限内に提出することが明記されています。

国別報告事項は、国別報告書に相当にするもので国別の活動状況に関する情報を文書化したものです。
提出義務を持つのは、直前の会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループの構成会社などで最終親会社もしくは代理親会社などに限定されます。

事業概況報告事項は、マスターファイルに相当するものでグループの活動の全体像に関する情報を文書化したものとなります。
提出義務を持つのは、直前の会計年度の連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループの構成会社で、国別報告事項および事業概況報告事項は大規模な多国籍企業グループの構成会社に提出義務があることが分かります。

ローカルファイルの概要についての豆知識

ローカルファイルの作成義務者は、国外関連取引を行った法人で確定申告書の提出期限までに作成および提出の準備が必要です。
独立企業間価格(ALP)を算定するために必要と認められる書類を作成すること、保存期間および保存場所は原則確定申告書の提出期限の翌日より7年間、国外関連取引を行った会社の国内事務所で保存します。

国外関連者との間における前事業年度の取引金額(受払合計)が50億円未満であり、かつ国外関連者との間における前事業年度の無形資産取引金額(受払合計)が3億円未満の場合、ローカルファイルの同時文書化義務は免除されます。
ただ、同時文書化義務が免除されたもので、移転価格税制の対象になるので税務調査の際には提示もしくは提出が必要になるなど注意が必要です。
なお、前事業年度がない企業の場合は当該年度での金額で判断します。

提出期限は、税務調査において提示もしくは提出を求められた日より一定の期日になりますが、一定の期日までに提示もしくは提出がされないときには推定課税および同種の事業を営む者に対しての質問検査を行うことができる、このようなルールがあるので注意しなければなりません。
使用言語は指定はないのですが、日本語以外で記載されているものは必要に応じて和訳が必要になることもあります。

まとめ

ローカルファイルは、移転価格課税のリスクに対する対処だけでなく経営においての効率化や子会社の管理など会社経営に様々なメリットに繋がるものです。
移転価格税制が適用されるとなった際には、国外関連取引が独立企業間価格で行われたとみなして所得の計算をする必要があります。
移転価格課税のリスクには多額の課税処分や国際的二重課税などがあり、ローカルファイルを作成していない場合には調査の長期化や推定課税もしくは同業者調査に基づく課税のリスクなどが存在します。
なお、ローカルファイルを作成することは経営を可視化できるメリットもあるなど知識を得ておくことをおすすめします。